公演案内
令和5年度(2023-2024)
東京能楽囃子科協議会 定式能
於 国立能楽堂
文化庁文化芸術振興費補助金
(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))
独立行政法人日本芸術文化振興会
解説 岡本はる奈(小鼓方観世流)
二〇二三年度の囃子科協議会の舞台は、入梅を迎え雨の気配と共に幕を開けます。
六月公演では、金剛流舞囃子「絵馬」、観世流舞囃子「恋重荷」、狂言「禰宜山伏」、一調「鳥追舟」、及び袴能にて観世流能
「通小町 雨夜之伝」をご覧いただきます。
【舞囃子】
絵 馬
「絵馬」は伊勢神宮を舞台に晴天祈願には白い馬、雨乞いには黒い馬の絵馬をかけるという風習のやりとりから五穀豊穣を願ったのち、天岩戸での神隠れの再現へと広がる祝言性の高い曲です。舞囃子では後場の天照大神・天鈿女命・手力雄命の三体による舞と共に囃子が奏せられますが、静けさと格式の高さを感じる神舞から神々の遊ぶ神楽、急之舞での場面転換へと続きます。太陽(天照大神)が再び出現するまでのすべてを表現し、休む間もない囃子の技は、能を一曲分観るほどの濃密さです。小鼓は神楽で特に重要な位置を占めると言われます。小鼓大倉流はかけ声や芸風に武家的要素を残し、その様を墨で描いた絵に例えて「墨染桜」と表現され、今回は大鼓も揃って大倉流です。また太鼓観世流は古式の手組み(打ち方)を多く残す流儀と言われます。
金 剛 龍 謹
廣 田 泰 能 豊 嶋 晃 嗣
( 笛 ) 藤 田 貴 寛(一噌流)
(小 鼓) 飯 冨 孔 明(大倉流)
(大 鼓) 大 倉 慶乃助(大倉流)
(太 鼓) 小 寺 真佐人(観世流)
恋重荷
「恋重荷」では菊の下葉取りの老人の身分違いの恋が悲劇を招きます。錦で包んだ重い石を、それとは知らせず持つことを促した女御側の残酷さもさりながら、死して力を得たシテの執心も恐ろしいものです。怨霊となった後シテの出現を囃すどっしりとした「出端」は、老人の思いの重さを表すかのようです。殺生・盗みに加えて邪淫を犯したものが落ちるとされる衆合地獄での苦しみは煙と共に昇華していきます。太鼓方は金春流。前述の太鼓観世流と比べて調べ緒のかけ方、バチの扱いから対象的です。また、粒を打つ前後に左右のバチが宙で揃っている様子は「拝み打ち」とも言われます。力強く囃子の根幹を支える大鼓は高安流、又小鼓は幸流です。
武 田 志 房
( 笛 ) 成 田 寛 人(一噌流)
(小 鼓) 住 駒 充 彦(幸 流)
(大 鼓) 柿 原 光 博(高安流)
(太 鼓) 梶 谷 英 樹(金春流)
【狂 言】
禰宜山伏
狂言「禰宜山伏」の風刺は現在にも通じます。茶店で居合わせた禰宜(神官)に横柄な態度を取る山伏。亭主の機転で大黒像を相手に祈り比べをすることに。曲の後半、禰宜と山伏二人での祈り比べではにぎやかに囃子が入ります。権力を振り回す乱暴者に大黒天はどう応じるでしょうか。
大 藏 彌太郎
大 藏 基 誠 吉 田 信 海 大 藏 章 照
( 笛 ) 成 田 寛 人(一噌流)
(小 鼓) 住 駒 充 彦(幸 流)
(大 鼓) 柿 原 光 博(高安流)
-休憩15分-
【一 調】
鳥追舟
稀曲の一調「鳥追舟」の場面はたわわに実る水田での鳥追い。都から帰らぬ夫を待つうちに使役される身へと転落した母子が、田に来る鳥を悲しく追う姿が描かれます(鳴子ノ段)。
春の京都の洛中のようなはなやかな芸風から、門前の桜と称される小鼓幸流一調の中でも、流儀や役謡(シテが謡うかワキが謡うか)によるバリエーションが顕著な曲です。
幸流では一調を打つ際には、通常の能で打つ手組みをすべて変えて打ちます。つかずはなれずでその相手を務める謡は、能と同じ位あるいはさらにゆったりと謡ってもらうように、小鼓方はシテ方にお願いすることができます。座る位置は、正中の後見の座る少し後ろの位置となります(幸流の場合)。つまり一調では小鼓方が「シテ」になるとも言えます。
聴き所は多くありますが、謡の流儀に関わらず、必ず打つ特徴的な手(打ち方)として「しどろもどろの手」と呼ばれる打ち方があります。「思い乱れて我がここち、しどろもどろになる鼓の」と謡われるところは、とりわけ耳を澄ませてお聴きください。
能ではやがて帰還した夫が舟に乗った妻子を見つけ、再会を喜びます。
坂 井 音 隆
(小 鼓) 曽 和 正 博(幸 流)
【袴 能】
通小町 雨夜之伝
袴能「通小町 雨夜之伝」は、強い執心と雨の一曲です。夏籠りをする僧の元へやってきた里の女性は、小野小町の幽霊でした。
ススキの生い茂る市原野で成仏を願う小町の元に深草少将の霊が現れます。思いをとげるためにはたった一夜が足りなかった百夜通いを再現するうちに、想いを出し尽くした二人は共に成仏します。蓮の花が開くような音は小鼓幸清流です。
今回は雅な能装束ではなく紋付き袴で能が演じられます。視覚的に簡素である分、より一層シテ・ツレ・ワキの型が際立ちます。
一方で囃子と謡による音の色彩は豊かです。名ノリ笛で艷やかに物語を開く笛の音。謡は木の実を古の歌人に例え、新古今和歌集等の和歌を散りばめます。
小書きの雨夜之伝では、小町の元へと通った少将の心持ちがより深く鋭く表されています。舞台を一巡する所作(立廻・あるいは
イロエ)が包括するのは九十九夜の時間と苦悩です。笠をかざし独り行く少将の心の色を大小の鼓が表現し、今回は特殊演出として小鼓が流しの手を打ちます。甲の音から乙の音へと鼓が静かに、やがて激しく変わる様は打ちつける雨音です。百日目の少将は、濃紫の裏地の藤色の指貫袴に襲の色目の摺り衣での狩衣姿。鮮やかな出立ちが皆様の目には浮かびますでしょうか。
観 世 恭 秀
清 水 義 也
殿 田 謙 吉
( 笛 ) 松 田 弘 之(森田流)
(小 鼓) 幸 正 昭(幸清流)
(大 鼓) 亀 井 広 忠(葛野流)
令和5年4月14日 10時 販売開始
申込み受付
○東京能楽囃子科協議会オンラインチケットサービス
○観劇サイト「カンフェティ」チケットセンター
電話受付
0120-240-540(平日10:00~17:00)
国立能楽堂座席表
国立能楽堂の地図
国立能楽堂の所在地
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
お問い合わせ – infomation
電話番号: 03-6804-3114 (平日10:00~17:00)
ご不明な点がございましたら、まずはお気軽にご相談下さい。 →メールでのお問い合わせ